枕草子 すさまじきもの。 枕草子(27) すさまじきもの(二五段)その3

枕草子『すさまじきもの(除目に司えぬ人の家〜)』のわかりやすい現代語訳と内容 / 古文 by 走るメロス

枕草子 すさまじきもの

昼ほゆる犬。 春の 網 あ 代 じろ。 三、四月の紅梅の 衣 きぬ。 牛死にたる牛飼ひ。 興ざめなもの。 昼間に吠える犬。 春の網代。 三、四月の紅梅 襲 がさね の衣。 牛が死んでしまった牛飼い。 児 ちご 亡くなりたる 産 うぶ 屋 や。 人おこさぬ 炭 す 櫃 びつ 、 地 じ 火 か 炉 ろ。 博 はか 士 せ のうち続き 女 おんな 子 ご 産 む ませたる。 赤ん坊が死んでしまった産屋。 火をおこしていない角火鉢や、いろり。 博士(=跡継ぎが男に限られている教官)が連続して女の子を産ませた場合。 方 かた 違 たが へに行きたるに、あるじせぬ所。 まいて 節 せち 分 ぶん などはいとすさまじ。 方違えに行ったのに、もてなしをしない所。 まして節分(の方違えなどの時に、もてなさないの)は、とても興ざめだ。 人の国よりおこせたる文の、物なき。 地方からよこした手紙で、贈り物を添えていないもの。 京のをもさこそ思ふらめ。 されどそれはゆかしきことどもをも、書き集め、 京からの(手紙の場合)もそう思っているだろう。 しかしそれは(地方の人が)知りたそうなことなどをも書き集め、 世にあることなどをも聞けば、いとよし。 世の中の出来事などをも知ることができるので、(京からの手紙の場合は)贈り物がなくてもすばらしいのだ。 人のもとにわざと清げに書きて 遣 や り つる文の、 人のところに特別にきちんと書いて送った手紙で、 返り言今はもて 来 き ぬらむかし、あやしう遅き、と待つほどに、 きっと返事をもう持ってきているだろうよ、妙に遅いことだ、と待つうちに、 ありつる文、立て文をも結びたるをも、いと汚げにとりなし、 先程の手紙を、それが(正式な)立て文でも(略式の)結び文にしろ、たいそう汚げに扱い、 ふくだめて、上に引きたりつる墨など消えて、 けばだたせ、(封の印である)上に引いていた墨なども消えて、 「おはしまさざりけり。 」もしは、「御物忌みとて取り入れず。 」 「いらっしゃいませんでした。 」もしくは、「御物忌みだと言って受け取らない。 」 と言ひて持て帰りたる、いとわびしく、すさまじ。 と言って持ち帰ったのは、とても情けなく興ざめである。 ここでは護法童子のこと。 蝉 せみ の声しぼり出だして読み 居 ゐ たれど、 蝉のような声をしぼり出して(お経を)読んでいたが、 いささかさりげもなく、 護 ご 法 ほう もつかねば、 少しも(物の怪が)退散しそうな気配もなく、護法童子も(よりましに)つかないので、 集り居念じたるに、男も女もあやしと思ふに、時のかはるまで読み困じて、 (家の者たちが)集まり座ってお祈りしていたが、男も女も妙だなと思っていると、(修験者は)時が変わるまで読み疲れて、 「さらにつかず。 立ちね」とて、数珠取り返して、 「まったく(護法童子がよりましに)つかない。 立ちなさい。 」と言って、数珠を取り返して、 「あな、いと 験 げん なしや」とうち言ひて、 額 ぬか より 上 かみ ざまにさくり上げ、あくびおのれよりうちして、寄り臥しぬる。 「ああ、まったく効き目がない」とつぶやいて、額から上の方に髪をかき上げ、(こともあろうに)あくびを自分から先にして、寄りかかって寝てしまったこと(は興ざめだ)。 いみじうねぶたしと思ふに、いとしもおぼえぬ人の、 ひどく眠たいと思っている時に、それほどにも思っていない人が、 押し起こして、せめてもの言ふこそ、いみじうすさまじけれ。 揺り起こして、無理矢理に話しかけてくるのは、非常に興ざめだ。 (3) 除 じ 目 もく に 司 つかさ 得ぬ人の家。 今年は必ずと聞きて、はやうありし者どもの、ほかほかなりつる、 除目(=官吏任命の儀式)に官職を得られなかった人の家(は興ざめである)。 今年は必ず(任官される)と聞いて、以前に仕えていた者たちで、離れ離れになっていた者たちや、 田舎だちたる所に住む者どもなど、皆集まり来て、出で入る車の 轅 ながえ も 隙 ひま なく見え、 田舎じみた所に住む者たちが、みな集まってきて、出入りする牛車の轅も絶え間なく見え、 もの 詣 もう でする供に、我も我もと参りつかうまつり、物食ひ酒飲み、ののしり合へるに、 (主人が任官祈願のために)寺社に参拝するお供に、我も我もと参上し、物を食い酒を飲んで、騒ぎ合っていたが、 果つる 暁 あかつき まで門たたく音もせず、あやしうなど、 耳立てて聞けば、 (任官式の)終わる明け方まで門をたたく音もせず、妙だなと耳をすまして聞くと、 先追ふ声々などして 上 かん 達 だち 部 め など皆出で 給 たま ひぬ。 (貴人の通行のための)先払いする声などがして、(任官式を終えた)上達部たちはみな退出なさってしまった。 もの聞きに、 宵 よい より寒がりわななきをりける 下 げ 衆 す 男 おとこ 、 様子を聞きに、宵から(出かけて)寒がり震えていた使用人の男が、 いともの憂げに歩み来るを見る者どもは、え問ひだにも問はず、 ひどく憂鬱そうに歩いてくるのを見る者たちは、尋ねることさえもできず、 外より来たる者などぞ、「殿は何にかならせ給ひたる。 」など問ふに、 よそから来ている者などが、「ご主人は何におなりになりましたか。 」などと尋ねると、 いらへには「何の 前 ぜん 司 じ にこそは。 」などぞ、必ずいらふる。 返事には「どこそこの国の前の国司です。 」などと、必ず答える。 まことに頼みける者は、いと嘆かしと思へり。 本当に(主人の任官を)あてにしていた者は、たいそう嘆かわしいと思っている。 つとめてになりて、ひまなくをりつる者ども、一人二人すべり出でて去ぬ。 早朝になり、すき間なくいた者たちは、一人二人とこっそり抜け出して帰って行く。 古き者どもの、さもえ行き離るまじきは、来年の国々、手を折りてうち数へなどして、 古くから仕えている者たちで、そのように離れて行くことができそうもない者たちは、来年(国司が交代する予定)の国々を、指を折って数えたりなどして、 揺るぎありきたるも、いとをかしうすさまじげなる。 体を揺すって歩き回っているのも、とても 滑稽 こっけい で興ざめな感じである。

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枕草子『すさまじきもの(すさまじきもの。昼吠ゆる犬〜)』のわかりやすい現代語訳と内容 / 古文 by 走るメロス

枕草子 すさまじきもの

昼ほゆる犬。 春の 網 あ 代 じろ。 三、四月の紅梅の 衣 きぬ。 牛死にたる牛飼ひ。 興ざめなもの。 昼間に吠える犬。 春の網代。 三、四月の紅梅 襲 がさね の衣。 牛が死んでしまった牛飼い。 児 ちご 亡くなりたる 産 うぶ 屋 や。 人おこさぬ 炭 す 櫃 びつ 、 地 じ 火 か 炉 ろ。 博 はか 士 せ のうち続き 女 おんな 子 ご 産 む ませたる。 赤ん坊が死んでしまった産屋。 火をおこしていない角火鉢や、いろり。 博士(=跡継ぎが男に限られている教官)が連続して女の子を産ませた場合。 方 かた 違 たが へに行きたるに、あるじせぬ所。 まいて 節 せち 分 ぶん などはいとすさまじ。 方違えに行ったのに、もてなしをしない所。 まして節分(の方違えなどの時に、もてなさないの)は、とても興ざめだ。 人の国よりおこせたる文の、物なき。 地方からよこした手紙で、贈り物を添えていないもの。 京のをもさこそ思ふらめ。 されどそれはゆかしきことどもをも、書き集め、 京からの(手紙の場合)もそう思っているだろう。 しかしそれは(地方の人が)知りたそうなことなどをも書き集め、 世にあることなどをも聞けば、いとよし。 世の中の出来事などをも知ることができるので、(京からの手紙の場合は)贈り物がなくてもすばらしいのだ。 人のもとにわざと清げに書きて 遣 や り つる文の、 人のところに特別にきちんと書いて送った手紙で、 返り言今はもて 来 き ぬらむかし、あやしう遅き、と待つほどに、 きっと返事をもう持ってきているだろうよ、妙に遅いことだ、と待つうちに、 ありつる文、立て文をも結びたるをも、いと汚げにとりなし、 先程の手紙を、それが(正式な)立て文でも(略式の)結び文にしろ、たいそう汚げに扱い、 ふくだめて、上に引きたりつる墨など消えて、 けばだたせ、(封の印である)上に引いていた墨なども消えて、 「おはしまさざりけり。 」もしは、「御物忌みとて取り入れず。 」 「いらっしゃいませんでした。 」もしくは、「御物忌みだと言って受け取らない。 」 と言ひて持て帰りたる、いとわびしく、すさまじ。 と言って持ち帰ったのは、とても情けなく興ざめである。 ここでは護法童子のこと。 蝉 せみ の声しぼり出だして読み 居 ゐ たれど、 蝉のような声をしぼり出して(お経を)読んでいたが、 いささかさりげもなく、 護 ご 法 ほう もつかねば、 少しも(物の怪が)退散しそうな気配もなく、護法童子も(よりましに)つかないので、 集り居念じたるに、男も女もあやしと思ふに、時のかはるまで読み困じて、 (家の者たちが)集まり座ってお祈りしていたが、男も女も妙だなと思っていると、(修験者は)時が変わるまで読み疲れて、 「さらにつかず。 立ちね」とて、数珠取り返して、 「まったく(護法童子がよりましに)つかない。 立ちなさい。 」と言って、数珠を取り返して、 「あな、いと 験 げん なしや」とうち言ひて、 額 ぬか より 上 かみ ざまにさくり上げ、あくびおのれよりうちして、寄り臥しぬる。 「ああ、まったく効き目がない」とつぶやいて、額から上の方に髪をかき上げ、(こともあろうに)あくびを自分から先にして、寄りかかって寝てしまったこと(は興ざめだ)。 いみじうねぶたしと思ふに、いとしもおぼえぬ人の、 ひどく眠たいと思っている時に、それほどにも思っていない人が、 押し起こして、せめてもの言ふこそ、いみじうすさまじけれ。 揺り起こして、無理矢理に話しかけてくるのは、非常に興ざめだ。 (3) 除 じ 目 もく に 司 つかさ 得ぬ人の家。 今年は必ずと聞きて、はやうありし者どもの、ほかほかなりつる、 除目(=官吏任命の儀式)に官職を得られなかった人の家(は興ざめである)。 今年は必ず(任官される)と聞いて、以前に仕えていた者たちで、離れ離れになっていた者たちや、 田舎だちたる所に住む者どもなど、皆集まり来て、出で入る車の 轅 ながえ も 隙 ひま なく見え、 田舎じみた所に住む者たちが、みな集まってきて、出入りする牛車の轅も絶え間なく見え、 もの 詣 もう でする供に、我も我もと参りつかうまつり、物食ひ酒飲み、ののしり合へるに、 (主人が任官祈願のために)寺社に参拝するお供に、我も我もと参上し、物を食い酒を飲んで、騒ぎ合っていたが、 果つる 暁 あかつき まで門たたく音もせず、あやしうなど、 耳立てて聞けば、 (任官式の)終わる明け方まで門をたたく音もせず、妙だなと耳をすまして聞くと、 先追ふ声々などして 上 かん 達 だち 部 め など皆出で 給 たま ひぬ。 (貴人の通行のための)先払いする声などがして、(任官式を終えた)上達部たちはみな退出なさってしまった。 もの聞きに、 宵 よい より寒がりわななきをりける 下 げ 衆 す 男 おとこ 、 様子を聞きに、宵から(出かけて)寒がり震えていた使用人の男が、 いともの憂げに歩み来るを見る者どもは、え問ひだにも問はず、 ひどく憂鬱そうに歩いてくるのを見る者たちは、尋ねることさえもできず、 外より来たる者などぞ、「殿は何にかならせ給ひたる。 」など問ふに、 よそから来ている者などが、「ご主人は何におなりになりましたか。 」などと尋ねると、 いらへには「何の 前 ぜん 司 じ にこそは。 」などぞ、必ずいらふる。 返事には「どこそこの国の前の国司です。 」などと、必ず答える。 まことに頼みける者は、いと嘆かしと思へり。 本当に(主人の任官を)あてにしていた者は、たいそう嘆かわしいと思っている。 つとめてになりて、ひまなくをりつる者ども、一人二人すべり出でて去ぬ。 早朝になり、すき間なくいた者たちは、一人二人とこっそり抜け出して帰って行く。 古き者どもの、さもえ行き離るまじきは、来年の国々、手を折りてうち数へなどして、 古くから仕えている者たちで、そのように離れて行くことができそうもない者たちは、来年(国司が交代する予定)の国々を、指を折って数えたりなどして、 揺るぎありきたるも、いとをかしうすさまじげなる。 体を揺すって歩き回っているのも、とても 滑稽 こっけい で興ざめな感じである。

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枕草子に見る 流行病の治療(すさまじきもの)

枕草子 すさまじきもの

枕草子:すさまじきもの すさまじきもの昼ほゆる犬。 ~) 1 次の単語の読み方を書きなさい イ)網代 ロ)産屋 ハ)炭櫃 ニ)地下炉 2 次の単語の意味を答えなさい イ)すさまじきもの ロ)網代 ハ)方違へ ニ)あるじせぬ 3 昼ほゆる犬。 春の網代。 三、四月の紅梅の衣。 イ)何がすさまじいのか 4 牛死に たる牛飼ひ。 児亡くなり たる産屋。 イ)何がすさまじいのか ロ)傍線部に注意して和訳しなさい 5 人おこさぬ炭櫃、地下炉。 イ)何がすさまじいのか 6 博士のうち続き女子うませ たる イ)なぜ傍線部「たる」と連体形になっているのか ロ)和訳しなさい ハ)何がすさまじいのか 7 方違へに行きたるに、あるじせぬ所。 まいて節分などはすさまじ。 「枕草子」「方丈記」は平安時代の作品であるが(厳密に「方丈記」は平安後期から鎌倉初期にかけてとされる)、 「徒然草」は鎌倉後期から室町初期とされる点は注意しておきたい。

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